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在インドネシア日本国大使館
在ジャカルタ日本国総領事館

Embassy of Japan in Indonesia/ Consulate General of Japan in Jakarta



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    リアウ大学日本語学科でのスピーチ(要旨)
    「インドネシア人学生への日本語学習の勧め」


    平成21年6月12日
    在インドネシア日本国大使館
    山田滝雄


       私の若い頃は、日本を含めアジア諸国の学生の中で皆さんのようにアジアの言葉を学ぶ学生の数はもっと少なかったと思います。しかし、私は今になって、「若い頃に英語だけではなくアジアの言葉を学習しておけば良かった」としみじみ思っています。今日では、皆さんのようにアジアの言葉を学ぶ学生数は大幅に増加しており、リアウ大学でも100名以上の学生の皆さんが日本語を勉強しておられるのは本当に嬉しいことです。私はその数が今後もっと拡大すれば良いと思います。そのような願いを込めて、私自身の経験を交えつつ今日はお話ししたいと思います。
       
       私の学生時代は、何はともあれ先ず英語を勉強してみようというのが多くの学生の自然な発想でした。私自身も月並みですが、将来の英米留学への憧れや、ビートルズ、ローリングストーンズ等のBritish Rock への関心などもあって、自然に英語を勉強し始めました。その頃は、今のように仕事で英語を使うことになるとは予想していなかったのですが、社会人になった後に留学の経験にも恵まれ、国際会議出席や論文書きなどの実践経験を通じて長い年月をかけて努力を積んだ結果、漸く一応のレベルに辿り着きました。
       
       しかし、私自身や周囲の友人の感想を申し上げれば、英語は日本人には大変難しい言葉でした。長い年月をかけて英語を学習するうちに、語学習得の難しさを痛感させられたというのが本音です。日本人に英語が難しい理由としては、次のようなものがあると思います。
    1. 英語には、日本人には聞き取りにくい音、発音しにくい音が多く含まれていること。
    2. 英語と日本語では、文法構造が大きく相違していること。
    3. 英語には、意味が同じでもニュアンスが違う語彙が数多く存在していること。
     
       私は特に(1)の音声的な壁を克服するのに苦労し、自分を含め日本人には語学の才能が余りないのではないかと勝手に思いこんでしまいました。そして、アジアの言葉を含めた他の言語に関心はもちつつも、実際に学習してみようという意欲を抱けないまま、いつしか時が経ったような気がします。
       しかし、過去10年近くの間、偶々仕事でアジア諸国との関係に携わり、いくつかのアジアの言葉を囓ってみて、自分が全く間違えていたことに気づかされました。日本人には語学の才能がないわけではなく、むしろ韓国語やヒンディー語のようなアジアの言葉に関しては、記憶力が良く勤勉な日本人は、会話を含めて最も上達が早いと言われているのです。
     
       韓国語とヒンディー語の共通しているのは次のような点です。これらの点が、日本人にとってこの二つの言葉の学習を易しくしています。
    1. 文法構造が日本語に似ていること(動詞が一番後にくることを含めて語順は全く同じ)
    2. 日本人に聞き取れない音、発音できない音が少ないこと。
    逆にこれらの言葉は、欧米人にはとても難しい言葉だと言われています。
     
       インドネシア語も日本人には比較的勉強しやすい言葉です。文法構造は日本語とインドネシア語ではかなり違っていますが、インドネシア語の音はとても聞きやすく、発音しやすいように感じます。私は、インドネシアに来て僅か2―3ヶ月ほどの時期に、インドネシア語で初めてスピーチをしましたが、聴衆の皆さんにとても判りやすかったと言って頂いて感激しました。これは英語を勉強し始めたばかりの頃には考えられないことでした。
     
       さて、ここからが本日の本題です。日本人にとってインドネシア語が学習しやすい言葉であるとすれば、インドネシアの皆さんにとっても日本語はとても勉強しやすい言葉であるように思います。いやそれどころか、私は、「インドネシア人は世界で最も日本語が上手くなれる人たち」ではないかと考えています。その理由を今から説明します。
    1. 日本語は、音声的にインドネシア人にとって大変馴染みやすい言葉だと思います。インドネシアの皆さんが話す日本語の発音は、とても自然で私たちの耳に快く響きます。
    2. 日本語は、インドネシア語と文法構造がかなり違いますが、基本的な文法構造はそう複雑ではないと言われています。ですから文法構造の相違は克服可能な問題だと思います。
    3. 日本語が難しい一つの理由は、覚えなければならない漢字が多いことです。この面では、漢字の母国である中国人の方にadvantageがあると思います。皆さんも漢字習得には苦労されていると思いますが、若くて記憶力が優れている今の内に、一つでも多くの漢字を覚えるように努力してみて下さい。
    4. 日本語を覚える上で漢字よりもっと難しいのは、「尊敬」「丁寧」「謙譲」といった日本の社会関係を反映した言葉の使い分けをマスターすることです。私が「インドネシア人は世界で最も日本語が上手になれる人たちだ」と申し上げている理由は、インドネシアの皆さんがこの使い分けを最もスムーズにマスターされているように思うからです。多分それは、インドネシアの伝統的社会関係の中でも、日本と同様に、「目上への尊敬」や「謙遜」という美徳が育まれてきたからではないでしょうか。
     
       ですから皆さん、どうか自信を持って日本語を勉強して下さい。今日、世界の数多くの方々に日本語を勉強して頂いていますが、皆さんのレベルは高い方です。勿論、勉強する中では、漢字がなかなか覚えられないとか、助詞の使い分けが難しいとか、色々な壁にぶつかることもあるでしょう。しかし、自信を持って「Never Give Up」の精神で学習を続けて下さい。インドネシアの皆さんには日本語学習について大きなAdvantageがあります。ねばり強く努力を続ければ必ず結果が出るはずです。
     
       日本語を話せることのメリットは、これから益々大きくなると思います。
     
       そもそも私の若い頃、アジアの言葉を学習する若者が多くなかったのは、アジアの言葉を学習してもメリットが感じられないと思う人が多かったためです。しかし、今日では東アジアの域内貿易依存度が50%を超えるなど、アジア諸国の経済関係は大変緊密化しています。アニメ、音楽、ファッション、食事、ライフ・スタイル等、文化面でもアジアの人々はお互いに大きな影響を与えあうようになって来ています。そして、アジア諸国間の人の移動も爆発的に増加しています。近年、日中間では年間500万人、日韓間では400万人の人の往来があると言われています。日韓間の人の往来は20年くらい前までは年間数万人と言われていましたので、僅かの間に人の往来が100倍以上に増大したのです。
     
       リアウ州におられる皆さんには、このようなアジア全体の相互依存関係の深化が、まだ目に見える形で感じられないかもしれません。しかし、私はこのような変化の波が着実にインドネシアにも押し寄せてきていると感じています。インドネシアの一人当たりのGDPは既に2000ドルを超しています。石油生産収入で潤うリアウ州のGDPはこれより更に高い水準にあります。インドネシア経済は現在の世界経済危機の中でもプラス成長を続けると言われていますが、そのような高い潜在力にかんがみると、インドネシアの人が海外に出かけることが特別なことではなくなり、みんなが普通に海外旅行をする日も近い未来に訪れる筈です。
     
       杉山先生から、皆さんがパダンに旅行にされた時に、流れ星に「日本に行けますように」という願いをかけられたと聞きました。若い皆さんが日本に憧れを抱いておられることを、日本の外交官として本当に嬉しく思います。大使館としても、皆さんに留学の機会を少しでも多く提供するためにはどうすればよいのか真剣に考えていきたいと思います。先ほど申し上げたような、アジアの相互依存関係の深化、そしてインドネシアの経済発展といった新たな波を考えますと、私は、「日本に行きたい」という皆さんの願いが叶う確率は益々高くなっていくと思います。ですから皆さん、その日がくることを信じて、日本語を勉強して下さい。大使館も皆さんの努力を出来る限り応援していきたいと思います。