実施期間 :
    2005-2008
実施場所 :
    広域
案件概要 :
インドネシアは、地方分権化が進展しグローバリゼーションが本格化する中で、差し迫った課題である「食料安定供給と栄養改善」を政策目標に掲げ、食料安全保障の体制整備に努めている。2億人を超える人口を抱えるイ国は、かつてから食料、とりわけ米の自給を最重要課題としてきた。1960年代後半から1980年代前半には米の自給化を目指した増産政策を行い、1984年に自給を達成した。その後は世界銀行・IMF主導の構造調整で政策が見直され、農産物の多様化政策をとっていたが、1997年後半の経済危機をきっかけにして米の減産・大量輸入という食料危機に見舞われた。
政府は経済危機以降、IMFやWTOの要請に対応して自由化と市場開放を推し進めているが、同時に、食料危機の経験 から食料安全保障の必要性も強く認識している。こうした中、イ国政府は2001年の大統領令で農業省に食料安全保障庁を設置し、同庁に食料安全保障のために必要な政策立案・調整・調査の機能を付与した。また大統領を議長とし、食料安全保障庁を事務局とする国家食料安全保障委員会(National Food Security Council: NFSC)を創設。同委員会は、農業省をはじめ内務省、国防省、国家開発企画庁(BAPPENAS)など15省庁の長をメンバーとし、省庁間の調整、及び国家食料安全保障政策案の策定を主な活動とした。
しかし食料安全保障の体制整備においては、今もなお縦割りの行政組織が弊害になっており、農業省食料安全保障庁だけでなく備蓄部門を担当する食料備蓄公社(BULOG)や他の省庁が個々に政策を立案している。また政府職員の情報収集能力や食料消費動向予測の分析能力などが低いため、客観的な根拠に基づいた効果的な政策が 立案・実施できていない。
食料安全保障庁に対しては、すでにFAOやIFADなど国際機関がそれぞれの立場から協力を実施しているが、これら国際機関が進める農業政策は市場経済に重点に置いていることから国内には慎重論がある。こうした経緯から政府は、農業体系が灌漑稲作主体でインドネシアと類似している日本から、食料安全保障の考え方を吸収活用する意向を持ち、食料安全保障庁及び関係機関の機能強化のための技術協力を実施した。