「アチェの女性紛争被害者に対する日本の経済支援」
ジャロ協会代表
デデ・シャリアル・ザイヌディン氏

2007年、日本政府は在インドネシア日本国大使館を通じて、アチェのローカルNGOであるジャロに対し、「アチェ州アチェ・ブサール県における手工芸小規模産業を通じた女性紛争被害者の能力開発支援計画」への、85,136米ドルの草の根無償資金協力を行った(贈与契約締結日: 2007年6月11日)。右草の根無償資金協力の目的は、ローカルNGOであるジャロを通じて、アチェ・ブサール県の女性紛争被害者の経済活動を支援するもの。右支援においてジャロは、裁縫・刺繍及びその他の技術訓練を実施、運営を担い、訓練参加者が婦人用カバン、旅行カバン、財布、ノートパソコンケースなどの手工芸品を生産できるよう支援する。全ての作品にアチェ伝統のデザイン、柄が用いられる。この他、ジャロは3つの小規模生産センターまたは手工芸品工房をアチェ・ブサール県の3郡(クタ・マラカ郡、インドラプリ郡、モンタシック郡)に設立、運営する。

技術訓練の様子

ジャロ代表のデデ氏は、アチェの手工芸品事業における長い経験の持ち主で、最盛期には80人(ほとんどが女性)の作業者を指導していた。しかし、アチェで起こった紛争のため事業は崩壊、そして多くの女性作業者が生活の糧を失った。

草の根無償資金協力に申請する際、デデ氏は彼のこれまでの経験から、女性紛争被害者たちの多くには働く能力があり、裁縫・刺繍の生まれ持った才能があるが、働く機会がない、または非常に限られていることを知っているため、彼女達の経済活動を復興させたいという志望を伝えている。また彼は、自身の持つ知識や経験が、彼女達の経済活動の機会を広げてやるのに役に立つに違いないことを疑わなかった。

日本国大使館との契約締結から9ヶ月が経った今、デデ氏は3つの小規模な工房をアチェ・ブサール県の3郡に設立した他、バンダ・アチェ市内に小さな店舗を構えている。女性紛争被害者の作った商品は、国内の手工芸品市場で十分に太刀打ちできるほどになった。またジャロは、170人の女性紛争被害者に対し手工芸品生産の技術訓練、管理・運営を行ってきたが、その多く(およそ120人)は既に高品質の商品を生産できるようになり、個々の商品に対する十分な収入を得ている。

ラム・パナー村出身のマルスニスさん(35歳未亡人、子供2人)は、「私たちにこのような機会を与えてくれた日本国民の支援にたいへん感謝しています。おかげさまで、一週間に平均して15万ルピアの追加収入を得られるようになりました。」 と話す。
クタ・マラカ郡テウ・ダヤー村出身のイラワティさん(30歳、子供3人)も、「在インドネシア日本国大使館の方々、そしてジャロに、深く感謝しています。私たちが受けた技術訓練は、訓練後働き始めた時点から、生産した商品の売り上げから直に収入を得られた点で、(これまで受けた)他の訓練とは全く違っていた。一般的な女性の仕事はこれまで、1年に2回(それぞれ2週間ほど)の稲の種まき期と、収穫期に、田んぼで小作農民として働くくらいだった。」と言う。

ジャロの商品は現在、バンダ・アチェ地方でたいへんよく知られており、ジャロは頻繁にアチェを代表して、INACRAFT展示会(ジャカルタのスナヤンホールにて、2008年5月25〜30日)や、インドネシア文化市(同ホール、2008年6月4〜8日)など全国レベルの展示会に出展している。前述の両展示会を通じて、ジャロは3千万ルピア相当の商品を販売した。おそらく多くの人にとって、この金額は少なく感じられるだろうが、デデ氏やその指導を受けている女性グループにとってそれは大金であり、また自分達の商品が国内の手工芸品市場に受け入れられたという、彼女達の自信を高めた点で非常に大きな意味を成した。

ジャロの指導する女性グループが生産した商品を手に取り眺めるユドヨノ大統領(中央)とアニ夫人(左から2番目)
(INACRAFT 2008、ジャカルタ)
アチェ・ブースの一角で商品を販売する ジャロ代表、
デデ氏(写真左)
(INACRAFT 2008、ジャカルタ)

最後にデデ氏は、「日本国大使館の方々、ジャロがアチェ・ブサール県における女性紛争被害者の経済改善、職業技術訓練を行うことについて、信頼を寄せてくださり、ありがとうございました。自身、生産過程においても、マーケティング過程においても、当プログラムが今後持続していくために、まだ遣り残している仕事が多くあることを感じていますが、ジャロはこれまで、ジャロの指導を受けるグループが機会を得られるように、また昔からの関係者を通じたネットワークを用いて市場を開拓するなど、最善を尽くしてきたと信じています。」と伝えている。


Topik
「アチェの女性紛争被害者に対する日本の経済支援」
ジャロ協会代表
デデ・シャリアル・ザイヌディン氏