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インドネシアの電力需給状況と課題
2005年においてインドネシアの送電系統に連系されている発電施設の総容量は約27,000MWであり、このうち約74%に相当する約20,000MW(うち約5,300MWは民間電力事業体:IPP)がジャワ・バリ系統内に集中しています。ジャワ・バリ系統では2007年の最大電力(需要)が16,000MWに達しており、供給余力は望ましいとされる35%を大幅に下回る25%に留まり、仮に大型発電所の故障や燃料供給に問題が発生した場合、十分な電力供給が困難な状況にあります。実際に、ジャカルタでは系統安定を確保するために一部地域の強制停電を実施し、また、消費者に節電を呼びかかけている状況です。
インドネシアでは、今後20年間、約7%の電力需要の伸びを想定しており、一層の電力供給力の増強が急務となっています。こうした中、インドネシア政府は、2006年5月に石炭火力発電所開発加速プログラム(10,000MWクラッシュプログラム)を発表し、また、IPPによる発電所建設を推進するなどの対策を進めています。
また、2007年12月の「気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)」がバリで開催され、インドネシア政府として気候変動への強いコミットメントが表明され、温暖化ガス削減に資する気候変動に対応した電力供給への取り組みも重要な課題となってきています。
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逼迫するジャワ・バリ系統の電力供給能力強化への支援
人口及び産業が集中するジャワ・バリ系統における電力不足は、住民の生活や経済の一層の発展に大きな悪影響を与える懸念があります。日本としては、円借款を通じて、増加を続けるジャワ・バリ系統に対して、「グレシック火力発電所」、「タンジュンプリオク火力発電所」、「ムアラタワル火力発電所」、「ムアラカラン火力発電所」といったジャワ島東西の大型の主要発電所の整備を支援してきました。
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タンジュンプリオク火力発電所 |
また、ジャワ・バリ系統内の大容量の電力を効率的かつ安定的に送電する500kV基幹送電線の整備が進められていましたが、日本はジャワ島内の東西を結ぶ南回り500kV基幹送電線の整備を支援し2006年に完成しました。これにより既存の北回り送電線とともにジャワ島内の500kV基幹送電線がループ化されることになり、送電系統信頼度が向上するとともに、電力供給能力に比較的余力のある東部ジャワ地域からジャカルタ市を含む深刻な電力供給不足の西部ジャワ地域に対する電力供給が円滑に行われるようになりました。
このように日本としては、ジャワ・バリ両島の電力供給能力及び信頼度向上のための支援を通じ、同島の投資環境改善、住民の生活水準の確保・向上に貢献しています。
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気候変動に対応した電力開発への支援
気候変動は将来的に海水面上昇や多雨などを通じてインドネシアにも大きな影響を与え得る深刻な問題です。電力供給に不可欠な発電所も気候変動の原因となる温暖化ガス(CO2など)の主要な排出源の一つとなっており、温暖化ガスの排出が少ない電源の開発に対して日本としても支援を行っています。円借款を通じて、「ラヘンドン地熱発電所」、「ウルブル地熱発電所」などの地熱発電所を支援するとともに、地熱発電所の拡充や再生可能エネルギーの利用を促す制度改善への支援を検討しています。