各分野での日本のインドネシアに対する経済協力の紹介
農林水産業分野

インドネシアにおける農業分野の支援~灌漑分野支援

インドネシアでは、人口の約18%が農業従事者で、その多くが零細な規模で稲作を行っています。また、同国の貧困世帯の約2/3は農業分野で働いていることから、農業分野の発展は、これに関連する産業の振興とともに、貧困削減にも寄与するものとなります。インドネシアの農業は、1984年にコメの自給目標を達成した後、1997年までは著しい経済成長もあり、主としてコメ以外の作物が増産の対象となっていました。しかし、コメの生産は、1998年のアジア経済危機後の肥料・農薬価格の高騰や干ばつなどの気象災害等により影響を受けやすく、現在でも安定供給に課題を抱えており、近年改めてコメ生産が重要な問題として認識されています。

西ヌサトゥンガラ州スンバワ島の灌漑水路

日本はインドネシア農業に対し、様々な支援スキームを通して、農業生産基盤整備、作物生産技術、農業政策、調査・研究など多岐に亘る分野において多くの協力を行ってきました。中でも、インドネシアにおいては雨季と乾季があるため、年間を通じた水の有効利用が農業生産の重要な課題となっていますので、灌漑施設に代表される農業生産基盤の整備は農業の生産性の向上に大きく寄与してきました。

日本のインドネシアにおける灌漑施設整備への支援は円借款を通じて行われています。2007年度までにインドネシアにおいて実施された灌漑施設整備事業は49件、支援総額は約2,916億円で、これらにより灌漑が可能となった農地面積は約37万haに上ります。これらの支援は、1970年に東ジャワ州のブランタス川デルタ灌漑復旧事業から開始され、この後、北スマトラ州ウラル川河川改修及び灌漑改良事業(1971年)、ランプン州のワイ・ジュパラ灌漑事業等(1973年)と続き、ジャワ島及びスマトラ島中心に事業が実施されました。1980年代に入ると、南カリマンタン州のリアム・カナン灌漑事業(1984年)、南スラウェシ州のランケメ灌漑事業(1985年)、次いで、西ヌサトゥンガラ州及び東ヌサトゥンガラ州における小規模灌漑管理事業(1989年)など、ジャワ、スマトラ以外の島でも灌漑施設整備事業が実施されました。現在は、ジャワ島及びスマトラ島を中心に、円借款により整備された既存灌漑施設の復旧・維持管理のための事業(リハビリ・維持管理改善事業)、それから、スラウェシ島諸州、西ヌサトゥンガラ州、東ヌサトゥンガラ州等東部インドネシアにおいて、灌漑施設の新設・改修のための事業(小規模灌漑管理事業)などが行われています。

南スラウェシ州ランケメの灌漑施設

小規模灌漑管理事業においては、灌漑施設の整備とともに、灌漑用水の利用効率・効果を高めるための水利用組合や州・県政府灌漑局の能力強化、節水稲作技術(SRI:System of Rice Intensification)の導入などを組み合わせた支援が実施され、農業生産・農家所得向上に成果を上げています。灌漑施設の維持管理を担う水利組合は、この事業の受益地では高い組織化率を達成しており、施設の維持管理は良好な状態であるとも報告されています。SRIは、整備された灌漑施設を活用した省水灌漑(間断灌漑)を行い、慣行栽培法よりも少ない種籾の量により水稲栽培を行う方法ですが、いくつかの事業実施地区で慣行栽培法との比較を行ったところ、SRIでは慣行栽培法に比べて収穫量が約84%増加、灌漑用水量、生産費がそれぞれ約40%、約25%減少したという結果も出ています。事業の効果についての5州に亘る受益地における農民への聞き取りによれば、事業実施後、コメ収穫量及び農業収入が大幅に増えたと回答しており、さらに、大半の農民は生活水準が向上したと回答しています。

SRIによる稲(左)と慣行栽培の稲(右)

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