日本の食育・給食プログラムの本質ー大使の寄稿文
(ビスニス・インドネシア紙, 2024年11月14日付け)
プラボウォ・スビアント大統領率いるインドネシア政府は、特定のグループ、特に様々な教育レベルの子供を対象とした栄養価の高い無料給食プログラムのアイデアを打ち出した。
日本の学校給食は、100年以上の歴史を持っており、小・中学校段階が対象となっている。給食を通じて、子供達の適切な栄養摂取や発育障害の予防に加え、食育が行われるようになった。つまり、子供たちは、食育を通じて食や健康維持に関する知識などを学び、大人になってからも健康的な食生活について自ら考える力を養っている。日本では、食べることで病気の予防や健康維持を目指すという考えがあり、日本国民は栄養に高い関心を持っている。実際、2023年の日本人の平均寿命は、女性が87.14歳、男性が81.09歳である。こうした日本の学校給食は、インドネシアにおいても効果的なアプローチになるのではないか。
私は本年9月にダダン・ヒンダヤナ国家栄養庁長官を表敬訪問し、学校給食における日本の協力について意見交換を行った。長官は、日本の給食は栄養のバランスが取れているのに加え、子供たちが教室で一緒に食べており、共同体意識や友情が深まる点が良いと仰っていた。
日本の学校給食の概要を、ご参考までにインドネシアの皆様に共有させていただきたい。
- 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図る。
- 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、望ましい食習慣を養う。
- 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養う。
- 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養う。
- 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養う。
- 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深める。
- 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導く。
日本の学校給食は、主食(パン/米飯)、副食(おかず)、牛乳で構成されており、各学校の栄養教諭は、学校給食摂取基準と子どもたちの状況を見て献立を作成する。
食材は、残留農薬や細菌検査等を経て、調理員が衛生的に給食を調理する。学校給食を食育に活用するために、地産地消に積極的に取り組んでいる。
調理方法としては、学校内の調理場で調理する方法、共同調理場で調理し各学校に配送する方法、民間事業者の調理施設で調理しランチボックスで各学校に配送する方法がある。
学校では、全児童生徒が交代制で「給食当番」を担当し、当番になった子供たちがクラス分の給食を配膳室から各教室に運び、食器に盛り付ける。その際、少食の子や食物アレルギーを持つ子、多めに食べたい子にそれぞれ配慮する。食後は食べ残しをまとめ、食器を回収して配膳室に戻すなど、後片付けの習慣も学ぶ。生徒はそういった役割を担うことにより、白衣やマスクの着用など衛生面に対する知識や責任感を身に付けていく。給食の時間はご飯を食べるだけでなく、人と人との支え合いや礼儀、清掃の大切さを学ぶ大切な機会となっている。
食育では、給食を通じて、食に関する知識の習得や適切な判断力の向上、主体的に自他の健康な食生活を実現できるようになることを目指す。学校給食の献立を教材として活用することで、健康に良い食事や栄養素の働き、食品の生産・流通・消費などへの理解を深め、食品を選択する力や食事のマナー、食べ物を大切にする気持ちを育む。また、生産の仕事に携わる人々と接する体験活動を通して、地場産物について学ぶ。肥満ややせ傾向、食物アレルギー等の問題がある子供には指導を行って改善に向けた行動変容を促す。
本年9月上旬、JICAは14人のインドネシア政府関係者を日本に招いて、日本の学校給食に関する研修を実施した。また、2023年1月~2024年1月に、日本政府はUNICEFと協力し、ジャヤプラ近郊の小中学生に対して給食・食育のプロジェクトを行い、地元で手頃な価格で手に入る食材を用いてバランスの取れた食事を取ることの重要性を伝えた。
日本政府としては、こうした知見や経験をふまえて、プラボウォ政権の掲げるFree meal政策に協力し、インドネシアの人々の健康増進に貢献できたら嬉しく思う。インドネシアの各地域の特色や食文化を生かした栄養価の高い給食により、インドネシアの人々が健康で幸せな生活を送られることを心から願っている。
正木靖
駐インドネシア大使
https://bisnisindonesia.id/article/esensi-program-makan-siang-di-jepang
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