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インドネシアの不動産開発における日本(ビスニス・インドネシア、1月21日)![]() 日本のインドネシアにおける不動産投資への関わりの歴史は古い。日本の支援で建設された不動産の第1号は、ホテルインドネシアである。今から60年以上前、1958年の国交樹立の翌年に着工し、1962年8月に東南アジア初の5つ星ホテルとして開業した。ホテルインドネシアの建設は1962年開催の第4回アジア競技大会に合わせて計画され、現在もジャカルタ中心部のランドマークとして存在している。その証拠に、ホテルの名称はMRTの駅名「Bundaran HI」の一部にもなっている。 その後も、日本からの不動産投資は、インドネシア経済の発展を支えてきた。1985年のプラザ合意による円高を契機として、日系企業が自動車や家電の工場をインドネシアに設立する動きが強まった。この工場建設のニーズに応えるべく、1990年代の初めには、日系企業がインドネシアの企業と合弁企業を設立して、ジャカルタ東部のブカシ周辺からチカンペックにかけて大規模な工業団地の開発を行った。工業団地の開発では、道路・電気・水道・ガス等のインフラ整備から、工場で働く人のための商業施設、住宅、文教施設など多岐に渡る開発が行われた。こうした街づくりは日系企業をはじめとする外国からの投資を後押しし、現在は約2,000社の日系企業がインドネシアに拠点を設け、インドネシアの雇用と経済に貢献している。 堅調な経済成長により人々の所得水準が向上し、更に良好な住環境のニーズが高まったことに伴い、日系企業は、こうした住環境を実現するための投資も行ってきた。日本の大手建設会社では、商業施設へのアクセスの利便性を求める人々のために、大都市近郊でショッピングモールと合わせた大規模な住宅開発を行った。また、手頃な価格で良質な住宅を求める人々のために、インドネシアの気候風土に合わせた材料を使用する工法や、長期の住宅ローンを提供するなど、こうした人々に購入可能な戸建て住宅の開発・販売も進められている。 今後の不動産開発においては、インドネシアの人々のライフスタイルはますます変化し、その変化に対応していくことが求められる。近年では、ライフスタイルの変化に対応するため、インドネシアの企業と日系企業が連携して、デルタマスやBSDの開発の中で、スマートシティの考え方を取り入れた開発が進められている。10月には、私もデルタマス・シティにあるプロジェクトを視察し、日系企業による、デジタル技術を活用したセキュリティ向上など、更に利便性が高く、質の高い生活が提案されている住宅開発を肌で感じることができた。 MRTは2019年開業し、現在は北への延伸工事が進んでいる。今後は、東西線も計画されている中、鉄道利用を中心とした新たな都市型ライフスタイルへのシフトが予想される。将来的にはMRTなど鉄道沿線での公共交通指向型開発(TOD)といった駅直結型の駅前複合開発も本格化していくだろう。 これからも日系企業は不動産投資を通じて、インドネシアの人々に更に高い質の生活環境を提案し、インドネシア経済の発展に貢献していくことが期待される。また今後、インドネシア政府が計画する東カリマンタンへの首都移転にあたっても、日系企業が役割を果たしていくことを期待したい。私も引き続き不動産分野における日本の投資をしっかりとサポートしていきたい。 金杉憲治 駐インドネシア大使 >>>その他の寄稿文・挨拶 |