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「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の価値を共有(ビスニス・インドネシア紙、5月23日)![]() それもあってか、インドネシアと日本は食品産業の分野で関係は深く、日系メーカーの調味料、健康飲料などが昔からインドネシアで販売されています。 昨年ジャカルタに着任したとき、日本食レストランがモールなどで多く見られることに驚きました。あらゆる日本食がインドネシアで受け入れられていることは非常に喜ばしく、また、インドネシア風にアレンジされた日本食が流行っていることも興味深く感じます。 近年は、食品や日用品を販売するスーパーのような日系の小売店舗もインドネシアに進出しています。小売店舗という日本の流通管理システムもインドネシアで受け入れられてきたのではないかと感じます。このように日本のシステムが、インドネシアの食生活の一部を支え、さらには雇用創出の一助も担っているということは、長年培われてきた両国の深い関係を示すものだと思います。 このような緊密な関係を踏まえ、日本はインドネシアの食品産業分野での人材育成を支援する事業を2014年から実施しています。このプロジェクトの一環として、ボゴール農科大学を対象に、食品安全やマーケティングの講座が開催されてきており、日本の経験や知識が、インドネシアの食品産業の発展に役立つことを期待しています。 また、ビンタン島で日系企業がトマトなどの野菜を植物工場で栽培しているなど、日本の農業技術がインドネシアに導入されている事例もあります。今後、デジタル技術の活用やコールドチェーンの普及、食品安全技術などでの協力が実現できると思います。 一方で、コロナやウクライナ危機は、農業や食品産業にも影響を与えています。人や原材料の移動が制限された結果、サプライチェーンの分断や食料価格の上昇を招いており、食料の安定供給が私たちの生活に極めて重要であるということを改めて実感しています。 加えて、農産物の品質への関心も高まってきており、高品質の農産物をつくり、効率的に流通させることがますます重要になってきています。 このような現状を踏まえて、農業を利益を生む魅力ある産業へと発展させることが、両国にとっての共通の課題となっています。 そのため日本は、安全で高品質な農産物のサプライチェーンを構築するため、「官民協力による農産物流通システム改善プロジェクト」を2016年から実施しています。このプロジェクトでは、パイロット・エリアにトマト、ナスなどの日本の生鮮野菜を導入するとともに、高品質、高収量を目指して、環境に配慮した減農薬栽培を含む農業技術の導入を支援しました。具体的には、苗の管理方法、雨期の栽培方法、栽培カレンダーの導入などの技術指導を行ってきました。 また、単に生産を支援するだけでは、利益を生む産業へと飛躍するのは難しいことから、大消費地であるジャカルタへの販路拡大にも繋げられるよう、マッチング・イベントなども開催してきています。農家にとっては、安定的に供給する必要があるにも拘わらず、マーケティング・スキルが未成熟なこともあって、持続的なサプライチェーンを構築することは簡単ではありません。しかし、チアンジュール県で生産されているトマト、ナスといった一部の野菜では、既に販路の拡大に成功しています。 今後とも、サプライチェーンの構築を目的として、農家グループが自らマーケットのニーズを踏まえたビジネスプランを策定できるように支援していく予定です。また、デジタル技術を活用したEコマース、自動灌水システムなどの先端技術を提供する企業と先進農家グループとのマッチングも支援していくこととしています。 インドネシアのことわざ「Semakin berisi semakin merunduk(実るほど頭を垂れる稲穂かな)」は、実は日本にもあります。コメを中心とする農業・食文化、謙譲を尊ぶ精神など、多くの共通点を有する日本とインドネシア。今後とも、食料の安定供給は国の最も基本的な責務の一つであるという認識を忘れず、両国の持続可能な農業や食品産業の発展のために協力していきたいと思います。 金杉憲治 駐インドネシア大使 >>>その他の寄稿文・挨拶 |