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在インドネシア日本国大使館
Embassy of Japan in Indonesia



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脱炭素に向けて共に歩むエネルギー転換

(ジャカルタポスト、10月25日)




    今月末に英国でCOP26がスタートする。類似のエネルギー課題を抱えるインドネシアと日本にとって、カーボンニュートラルに向けた現実的な取組を促進させる絶好の機会だ。

    インドネシアにおいても、近年は、異常気象による洪水や地滑りなどの災害が、より頻繁に、かつ、より激甚化している。この異常気象を引き起こす気候変動への対応である脱炭素化の取組は、インドネシアを含む全ての国が取り組むべき喫緊の課題である。来年G20議長国のインドネシアに対しては、脱炭素に向けたリーダーシップに大きな期待が寄せられている。

    カーボンニュートラルの実現に向けて、主要な炭素排出源であるエネルギーの転換を考えていくことが重要である。その際は再エネの導入とともに、エネルギーの安定供給や経済性にも目配りが必要となる。こうしたエネルギー転換に伴う課題は各国の事情に沿って対応していくこととなる。インドネシアにおいては、経済成長に伴い電力需要が増大する見込みであること、化石燃料の輸出国であることが特徴的である。

    実際、電源構成が化石燃料に大きく依存していること(日本は約8割、インドネシアは約9割)や、島嶼国であり、海外からの電力融通が難しいこと、電気代の上昇は国民生活や産業活動に大きな影響を与えること、といった点は、インドネシアと日本の共通点であり、日本はその技術や知見を活かしてインドネシアのエネルギー転換に貢献していけると考えている。

    今回のCOPは2年振りの開催である。この間、米国がパリ協定に復帰し、気候変動に関するグローバルな議論が活発化した。各国は相次いで、温室効果ガスの新たな排出削減目標を表明し、今世紀半ばまでのカーボンネットゼロを宣言している。国際金融業界で、特に化石燃料プロジェクトへのダイベストメントの動きが急速に進んでいる。

    こうしたグローバルな脱炭素の動きが国際経済へ与える影響を踏まえ、G20においても気候変動が主要なテーマとなる。インドネシアは「共に回復し、より強く回復する」を来年のG20のテーマに掲げて、包摂性とともに、グリーンで持続可能な経済を重視する方針を打ち出している。

    インドネシアは既に脱炭素に向けた一歩を踏み出している。今年7月には、改訂版NDC(国が決定する貢献)とLTS(2050年までの長期低排出発展戦略)を国連に提出し、2060年までのネットゼロを表明している。この脱炭素を実現する上で、エネルギー転換は待ったなしの状況である。インドネシアは電源構成に占める再エネ比率を2025年に23%(現在の約2倍)に引き上げることを目標としている。エネルギーは産業や国民生活の基盤となるものであり、安定供給や経済性に留意しながら、目標を達成することが求められている。

   インドネシアのエネルギー転換は日本にとって他人事ではない。石炭・ガス火力の高度な技術は日本からインドネシアに輸出され、長年にわたり、ジャワ島を中心に、インドネシアの急成長する電力需要を支えてきた。来年にかけて、チレボン2やジャワ1、中部ジャワ、タンジュンジャティBなど1000MW級の大型の最新鋭の石炭(超々臨界)・ガス火力発電所が運転開始を迎える。

    石炭・ガス火力以外にも、スマトラ島を中心にアサハン水力やサルーラ、ムアララボ地熱など、様々な案件で資金協力や日本の技術が活用されている。インドネシアと日本は、二国間クレジット制度(JCM)-日本政府が主導するプロジェクトベースの二国間オフセット市場メカニズム-の枠組みに基づいて、これまで43件のプロジェクトを実施し、インドネシアの脱炭素移行と電力供給を支援している。

    日本が関わったこれらの基幹電源などを活用しつつ、如何に現実的かつ段階的なエネルギー転換を進めていくか。課題を共有する両国だからこそ大きな協力の可能性があると思う 。

    日本は、アジアのカーボンニュートラルに向けて、ガス利用やバイオマス、アンモニア等を利用した混焼、二酸化炭素を分離回収する技術であるCCS/CCUSなど、あらゆる技術を活用した、各国の実情に沿った、現実的なエネルギー転換が不可欠という考え方を重視している。

    今年の5月には、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」を表明し、こうした現実的なエネルギー転換を支援していく。具体的には、エネルギー・トランジションのロードマップ策定支援、アジア版トランジション・ファイナンスの考え方の普及、再エネ・省エネ、LNG等のプロジェクトへの100億ドルファイナンス支援、2兆円基金の成果を活用した技術開発・実証支援、「アジアCCUSネットワーク」などによる知見共有に取り組むこととしている。

    このイニシアティブに沿った形で、既に具体的なプロジェクトが進行している。例えば、バイオマス混焼技術の適用による老朽化したスララヤ石炭火力発電所の改造の検討(三菱パワー)や、パンチャ・アマラ・ウタマと共同でブルーアンモニアを製造する調査も進められている(三菱商事)。CCS/CCUS技術については、プルタミナ主導の下、中部ジャワ州グンディガス田でJANUS、日揮、Jパワーがバンドン工科大学と事業化調査を行っており、また、東部ジャワ州スコワティ油田においても、石油資源開発(JAPEX)がエネ・鉱省石油ガス技術研究開発所(Lemigas)と調査を進めている。

    グローバルな脱炭素化のトレンドの中で、来年G20議長国のインドネシアのエネルギー転換への取組は多くの注目を集めることだろう。日本は多様かつ最先端の技術を活用し、産官学で知恵を絞って、カーボンニュートラルという共通の目標に向かって、引き続き共に歩んでいきたい。



金杉憲治
駐インドネシア大使


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