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子供たちを学校へ戻さなければならない(コランシンド紙、9月13日)![]() 2020年初めに最も多くの学校が閉鎖されていた時期には、6千万人を超える子供たちが学校を離れ、遠隔での学習を強いられた。それ以来、再開した学校の数は増えているが、安全措置が執られていれば子供や学校はコミュニティ感染の主要因ではないことを示すグローバルな経験があるにもかかわらず、国内の学校のわずか4分の1強しか対面授業を再開していない。 我々は過去の経験から、最も脆弱な子供たちが学校閉鎖の影響を最も受けることを知っている。政府も民間部門も児童生徒とその家族を遠隔学習で支援する措置を執り続けているが、多くの子供たちは、持続的な障壁により、教育の著しい阻害にいまだに直面している。何百万もの家庭が安価で信頼できるインターネット及びデバイスにアクセスできない一方、多くの親は自分たちの子供の家庭学習を支援する時間も能力も十分にはない。 コロナの前でさえ、インドネシアには430万人の非就学児がいて、15歳の全生徒の約70%が最低限の読解力や数学的思考能力を有していなかった。長引く学校閉鎖により、この国の就学における過去10年間の強力な進捗が妨げられるおそれがある。最も周縁化された子供たち、すなわち経済的に恵まれない生い立ちの子供たち、地方の遠隔地に住んでいる子供たち、そして障害を持つ子供たちは、さらに深い剥奪に陥り、同級生にさらに後れを取り、ますます多くが退学する大きなリスクにさらされている。 しかし、教育への影響を超えて、通学できない子供たちは更なるリスクに直面している。児童婚と子供への暴力が心配されるほどますます多くの文書で報告されており、それにより子供たちが学校に残れなくなっている。予防接種、給食、心理社会的支援といった学校における不可欠なサービスは深刻に阻害又は停止されている。社会的孤立は経済的不安定と相まって若者たちのメンタルヘルスに深刻な影響を与えている。 生徒たちの教育、保護及び福祉にとってのこれらの険しい結果は過小評価されてはならず、再開計画において学校が優先されることが一層重要である。インドネシアと日本は文化面、社会面及び経済面で異なるが、日本の経験は、コロナ禍においていかに安全に学校を再開できるかについて洞察を提供できるかもしれない。日本の多くの学校は2020年2月に一時的に臨時休業を行ったが、多くの学校は、デルタ株がより支配的となり新規感染者数が増加していても、感染予防のための厳格な措置を執ることで、既に対面授業を再開している。これは、子供たちを一人も取り残さないことが、子供たちをコロナからできるだけ安全に守ることを確保することと同じくらい重要であるという認識に基づいている。地域レベルの学校臨時休業は、その地域における全ての社会経済活動が停止されたときにのみ行われるべきである。 子供たちをコロナから守り、同時に対面学習に関する国家ガイドラインに沿って全ての子供たちのために学校を安全に再開することを促進するためには、特に地方レベルでの協調した取組が必要である。ユニセフと日本政府の支援によりパプア州と南スラウェシ州で実施されている「学習への安全な復帰」プログラムはその一例である。このプログラムを通じ、ユニセフは地方当局と協力して子供たちが安全に学校に戻って学習を継続することを可能とし、コロナ禍の間制限されていた不可欠な保健サービスを再開し、水・衛生インフラを改善し安全な行動を促進し、そして最も必要としている子供たちのために児童保護サービスを拡大している。 しかし、国中の学校が完全に再開し開校し続けるためには、教員をウイルスから保護することを支援し対面での授業を可能とするため、教員も新型コロナ・ワクチンの接種が優先されなければならない。(インドネシア)政府は教員のワクチン接種の重要性を認識し、ワクチン・プログラムにおいて教員を優先する必要性を強調する主要法制・政策を打ち出している。 しかし、教員のワクチン接種のペースは加速する必要がある。今日時点で、インドネシアの560万人の教員及び教育関係者のうちおよそ半数が第1回目のワクチンを接種し、39%が2回接種済となっている。教員の間でも州・県によって大きく異なり、ジャカルタ首都特別州の教員の81%がワクチン接種済であるのに対し、北マルク州ではわずか18%である。州・県レベルの当局がどこでどうやって教員がコロナ・ワクチンを接種できるかについての情報を提供し、遅滞なくアクセスできるようにすることが重要である。 インドネシアにおけるワクチンの展開の加速を支援するため、日本は216万回分のアストラゼネカ社製ワクチンを当国に供与し、コロナ禍との共通の闘いにおいてインドネシアを支援し続けている。インドネシア政府による限定的な対面学習を奨励する取組に加え、教員のワクチン接種加速は、子供たちを学校に戻す原動力となることが期待される。 子供たちにとって、学校は学習の場所であるだけではない。1年以上にわたり、子供たちは重要なサービスと自分たちの福祉と成長にとって不可欠である教員や友だちとの交流の機会が失われてきた。私たちは、子供たちのまるまる一世代が自分たちの将来の可能性をさらに損なわせてはならない。 私たちは、子供たちを学校に戻さなければならない。 デボラ・コミニ ユニセフ代表 金杉憲治 駐インドネシア大使 >>>その他の寄稿文・挨拶 |