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インドネシアのコーヒー文化(メディア・インドネシア紙オンライン版、5月16日)![]() インドネシアは世界有数のコーヒー豆生産国である。日本でもよく知られているスマトラのマンデリン、スラウェシのトラジャだけでなく、ジャワ、バリ、フローレス、パプアなどの各地でコーヒー豆が生産されている。日本のコーヒー生豆国別輸入量で、インドネシアは第4位を占める。 ジャカルタに着任して2年余りが過ぎたが、コーヒーを通じてインドネシア社会の哲学を感じる場面がある。 インドネシアの方々との面会に行くと、インドネシア産コーヒー豆を使用したコーヒー(kopi tubruk)のおもてなしを受けることがしばしばある。また、コロナ禍の2022年3月、インドネシア政府がハイブリッド形式で開催したコーヒーイベントにオンラインで参加したこともある。事前に送付されたコーヒー豆を大使館で淹れて、アイルランガ経済担当調整大臣を始めとしたインドネシアの友人と画面越しにコーヒーを楽しむ企画だった。コロナ禍でも、コーヒーを通じてインドネシアの友人との絆を確認することができた。 インドネシアの人々はコーヒーを片手に夜通し語り合うことがしばしばあるという。多様なバックグラウンドを有する人々が寄り添って暮らす中で、胸襟を開いてじっくりと意見を交換し、相互理解を深めることを大切にするインドネシア社会の哲学をコーヒー文化の中に感じることができる。 外交の場においても、会議室でかしこまって議論するだけでは話が纏まらない時、コーヒーブレイクの和やかな雰囲気での会話で解決策が見つかるときもある。昨年、インドネシアがG20議長国を務めた際、インフォーマルな場も活用した各国への働きかけがG20での首脳宣言発出につながったのかもしれない。 先日、南スラウェシ州を公式訪問した際に現地でコーヒー事業に携わる邦人に伺った話であるが、コーヒーをめぐる日本とインドネシアとの協力についても紹介したい。今やインドネシア有数のコーヒー生産地として知られるトラジャでは、コーヒー豆の生産が絶滅の危機に瀕したことがあった。しかし、40年以上前、コーヒー生産地としてのトラジャの潜在性に着目した日本企業が地元の人々と協力してトラジャのコーヒー豆生産を復活させたという。近年でも、日本企業とJICAが協力して、コーヒー生産の持続的な発展を目指すため取組が行われている。 また、最近では、インドネシアの人気コーヒー店が日本へ進出し、一方で、日本の人気コーヒー店がインドネシアへ進出してきている。コーヒー文化を通じて両国間の交流が一層深まることを期待している。 日本とインドネシアが外交関係樹立65周年を迎えた今年、両国の交流を一層深く、また、より幅広い分野で協力を強化できるよう取り組みたいと、コーヒーを飲みながら考えている日々である。 金杉憲治 駐インドネシア大使 >>>その他の寄稿文・挨拶 |