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在インドネシア日本国大使館
Embassy of Japan in Indonesia



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EKB62(その6);共に働き、共に栄える!(Kerja Bersama, Maju Bersama!)


2017年8月11日



プラス「共に栄える!」


    4月10日に私がインドネシアに着任してから、早いもので、もう4か月になろうとしています。最初のご挨拶で、「共に働く」関係にしたい、という決意表明をし、5月18日に信任状を奉呈した時にも、大統領にそれを申し上げました。

    しかしながら、その後本格的に活動を開始してから、遅ればせながら、一つ新たに気付いたことがあります。それは、ジョコウィ大統領の内閣のモットーは、「働く」だけでなく、出来るだけ早く「具体的な結果を出す」ことだ、ということです。そして、日本とインドネシアの関係は、掛け値無くウイン・ウインの関係で、正に、共に結果を出すことのできる関係だということです。

    ということで、これからは、私たち大使館のモットーは、日本とインドネシアで「共に働き、共に栄える!」(Kerja Bersama, Maju Bersama!)にしたいと思います。引き続き、どうぞよろしくご支援ください。

チレゴンで考えたこと


    このように考えたのには、他の理由もあります。少し前の話になりますが、7月21日に、ジャワ島の西の端に位置するバンテン州の都市、チレゴン市を訪問する機会がありました。これは、前回のEKB62で紹介したパレンバンに次いで、インドネシアの新たな州への訪問でした。

    チレゴン市は、ジャカルタから国道一号線を西に約120?q走ったところにある、ジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡に面した湾岸工業都市で、人口は40万人を超えます。距離はそれなりにあるのですが、東方面に行くのに比べて渋滞も限定的で、調子が良ければ、約1時間半で到着します。また、日本人にとっては、海だけでなく、ジャカルタと違い、近くに山が見えて、何となく心が落ち着く町です。南に100?q程度下ると、山岳地帯を中心とした美しい国立公園もあります。


「インドネシアと共に成長」


    チレゴン市を訪問した直接の契機は、チレゴンで行われたクラカタウ・オーサカ・スチール(KOS)の竣工式にお招きいただいたことでした。KOSは、製鉄分野ではインドネシアのトップの国営企業であるクラカタウ・スチールと、日本で有数の電炉メーカーで、高い技術を持つ大阪製鐵との合弁企業で、正に、日本とインドネシアの優れたところを結集する「良き結婚」の好例です。2015 年 3 月に着工し、2016 年 12 月には完成。今年、1 月には商業生産を開始していますが、その生産が軌道に乗ったことを確認した上で、今回竣工式の運びになりました。式典には、州や市の関係者に加え、御多忙な中、アイルランガ工業大臣もジャカルタからヘリコプターで駆け付けられました。これは、インドネシア政府がこのプロジェクトを非常に重視していることの証左だと思います。


    KOSは、年間生産能力は50万トンで、主にインドネシア国内市場での販売を想定して、中小形形鋼、棒鋼等の製造を行なっていますが、実は、この50万トンという生産能力は、大阪製鐵が日本国内で持つどの工場よりも大きいと聞きました。竣工式の後、工場内を見せて頂きました。棒鋼製造の際には、冷却過程で生じる歪を最小限にするために、まず出来るだけ長いものを作り、それをカットするのですが、KOSでは、100mの長さの延鋼を製造できます。この長さも、大阪製鐵の基幹工場である堺工場の140mに次ぐ長さだそうです。

KOSのモットーは、「インドネシアと共に成長する」こと。要するに、これからのインドネシアの経済発展のためにどうしても必要な高い品質の形鋼と棒鋼の生産を担うことで、大阪製鐵も成長を続ける、という方向で、莫大な投資にコミットされたということです。これは、正に、日本とインドネシアの間の「共に働き、共に繁栄する」関係を象徴する事業の一つだと思います。大変な決断に頭の下がる思いです。


努力も共に!


    KOS訪問の後、同じチレゴン市にある、アサヒマス・ケミカル社に伺い、塩の電気分解プラントの見学をさせて頂きました。

    実は、アサヒマス・ケミカル社との関係で、最近、ちょっとした問題がありました。それは、同社が半年に一回申請している工業塩の輸入許可がなかなか下りなかったことです。インドネシアでは、国内の小規模塩田農家を保護するために、食用塩の輸入を厳しく規制しています。逆に、工業塩については、国内で十分な生産能力が無いので、国内で塩を使って各種の製品原料を製造しているアサヒマス・ケミカルのような会社のために、許可制とはいえ、輸入を認めてきています。

    今回の問題の直接の契機は、この制度を悪用して、工業塩と偽って輸入した塩を食糧塩として販売した業者が摘発されたことで、その結果、工業塩の輸入についても一括して管理しようという趣旨の法律が導入されたことです。実は、その法律については、実施規則が未だ出来上がっておらず、誰が責任を負うのかについて、インドネシア政府内で言わば「消極的権限争い」が起こったことが背景にあるようです。

    そのあおりを受けて、国内の塩の電解による製品原料製造で圧倒的なシェアを持つアサヒマス・ケミカル社は、原料の工業塩が後1週間強で底をつく、という事態にまでなりました。掲載している写真は、私たちが伺った時には、輸入実施直前で、本来は、後ろに見えるベルトコンベアのあたりの高さ8m程の塩の置き場が、殆んど底をつきかけている様子を写したものです。結局、官民の関係者が協力して各方面に強力に働きかけた結果、何とか、今回の半年一度の輸入は認められましたが、問題は、仮に塩の輸入が間に合わなかった場合に、一番困るのは、製品原料を使用する衣料品、靴製造等の数多くの中小インドネシア企業だったということです。

    現在、半年後の次回輸入に向けて、今後の安定した制度のあり方について、議論が行われているのは必要かつ良いことです。この事例は、改めて、日本とインドネシアの双方の繁栄が密接に結びついていることを再認識する機会となりました。日本とインドネシアは、「共に働き、共に繁栄する」ことができる関係ですが、そのためには、日本とインドネシアの双方が努力しなければいけない、という、当たり前のことをも意味します。このことを肝に銘じて、これからも頑張っていきたいと思います。