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在インドネシア日本国大使8月のハイライト(インドネシアとの防衛協力)令和4年8月31日
![]() 国際的には、ロシアによるウクライナ侵攻が続いている状況下で、ペロシ米下院議長による台湾訪問を受けて、中国が大規模な軍事演習を敢行し、地域の緊張がかつてないくらい高まっています。こうした中国による一連の軍事活動は、日本のみならず、この地域の平和と安定に深刻な影響を与えるものであり、大変心配な状況です。 こうした中で、今月は、陸上自衛隊が初参加した多国間演習スーパー・ガルーダ・シールドの開会式(於:南スマトラ州のバトラジャ)に出席し、日米インドネシアの3カ国による空挺降下訓練を視察する機会があったのですが、最近の新たな展開も踏まえて、今月のハイライトでは、日本とインドネシアとの安全保障面における協力に焦点を当てて、ご紹介したいと思います。 1.今月の写真
(南スマトラ州のバトラジャには、ポンドックチャベ空港から米軍の航空機に乗せて貰い、ガトットスブロト空港経由で移動しました。米軍とシンガポール軍の方々とご一緒しました。) 2.防衛面での交流・協力 (1)現場での協力と交流 日本とインドネシアとの関係について語る時、どうしても経済活動に焦点が当たりがちです。しかし、両国間の防衛交流・協力には長い歴史があり、近年、それは着実に深化してきています。従来は、同じ海洋国家ということもあって、主に海軍種間で交流が行われてきました。 統計的には、1969年以降、計33回、海上自衛隊によるインドネシアへの親善訪問が行われており、また、インドネシア海軍は1981年以降、計9回日本を親善訪問しています。このほか、艦艇の訪問に合わせた両国の親善訓練も数多く実施されてきました。なお、本年11月には、海上自衛隊創設70周年を記念し、国際観艦式や西太平洋海軍シンポジウムが東京で開催されることになっており、インドネシア海軍参謀長も招待されているので、今後、更にハイレベルの交流が進んでいくことを期待します。 このように伝統的に海軍種を中心に行われてきた両国の交流・協力ですが、今年に入って陸軍種間での協力が大きく深化しています。その一つの象徴が、スーパー・ガルーダ・シールドへの陸上自衛隊の参加です。これまで米インドネシアの陸軍種間で実施されてきたガルーダ・シールドが、本年は多国間のスーパー・ガルーダ・シールドと名称を変更し、オブザーバーを含む13か国が参加して、8月1日から14日の日程で開催されました。日本からは陸上自衛隊が初めて参加し、8月3日には日米インドネシアによる空挺降下訓練が実施されました。この訓練は、陸上自衛隊がインドネシア陸軍との間で行った初めての実動訓練でした。また、米陸軍も交えて、3か国の強固な連携を対外的に発信出来たことは、タイミング的にも大変良かったと思います。(陸上自衛隊の公式Facebookのページ(https://www.facebook.com/jgsdf.fp/videos/611361923689400/)もご参照ください。) スーパー・ガルーダ・シールドでの空挺降下訓練の成功から間もない8月7日から9日にかけて、吉田陸上幕僚長がドゥドゥン陸軍参謀長の招待を受けてインドネシアを公式訪問し、同参謀長やアンディカ国軍司令官との間で有意義な意見交換が行われました。これはコロナ禍が始まって以降、初めてとなる幕僚長級でのインドネシア訪問でした。 加えて、日本とインドネシアとの間では、国際社会に貢献するための協力も行われてきています。例えば、PKO協力です。8月8日には、国連三角パートナーシップ・プログラムが初めてインドネシアで実施されることに伴い、その開会式がボゴール近郊で開催され、吉田陸上幕僚長や陸上自衛隊の教官団が参加しました。今回、このプログラムの重機操作訓練に参加したインドネシア軍の隊員は、訓練終了後に全員が国連PKOミッションに派遣される予定です。こうした効果的な協力を通じて、日本はインドネシアのPKO要員の能力向上に貢献できると思います。 また、自然災害対応という共通の課題を有している両国の間では、人道支援・災害救援分野の協力も進めています。防衛省は、2019年から、この分野におけるインドネシアとの協力事業を開始し、相互訪問を通じ、これまでに約100名のインドネシア国軍関係者等を対象にセミナーや研修を実施してきました。また、今年7月には、航空自衛隊からジャカルタに派遣された専門家との間で、この分野におけるインドネシアの専門家との交流が初めて対面で実施されました。双方の知見や教訓を共有することを通じて、信頼関係や連携をより一層深め、両国の災害対処能力の向上につながっていくことを期待しています。 そして、防衛大学校を卒業したインドネシア国軍の留学生の存在も見逃せません。これまで約50名の卒業生が輩出されており、彼らは国軍内の様々なポストで活躍しています。今回のスーパー・ガルーダ・シールドや吉田陸上幕僚長の訪問を始めとする数々の防衛交流事業においても、その存在感を示してくれています。私もスーパー・ガルーダ・シールドを視察した際に、その何人かと懇談する機会がありましたが、彼らが帰国後も日本に大変親しみを感じてくれていることが本当にありがたかったです。 また、日本からも、インドネシア海軍大学指揮幕僚課程(SESKOAL)に、海上自衛官がこれまで8名派遣されています。インドネシア海軍士官や他国からの留学生と共に、インドネシア語で学び交流を深めた彼らは、後に防衛駐在官として再びジャカルタに赴任し、学生生活で培ったインドネシア海軍との人脈や語学力を活かし、両国の防衛交流の着実な深化に貢献してきてくれました。現在は、濱川毅3佐が留学中です。実は濱川3佐のお父様(濱川澄人氏)は元インドネシア防衛駐在官であり、濱川3佐自身、ジャカルタ生活は幼少期以来二度目となるそうです。さらに、濱川3佐のお兄さんもSESKOAL卒業生とのことであり、今後、防衛分野での協力の更なる深化に向けて、貢献してもらえることと思います。 (2)日本とインドネシアとの政策対話 両国間には、こうした現場での交流・協力を支える政策対話が10年以上にわたって行われてきています。もちろん、防衛当局がそれぞれのカウンターパートと意見交換する機会は、二国間訪問や多国間会議の機会なども含めて数多くあります。直近でも、6月のシャングリラ・ダイアローグの機会に岸防衛大臣(当時)がプラボウォ国防大臣と会談し、また、7月末に岩本防衛大臣政務官(当時)がインドネシアを訪問した際、プラボウォ国防大臣を表敬しています。 それに加えて、両国間には閣僚レベルの外務・防衛閣僚会合(「2+2」)と、事務レベルの外務・防衛当局間(PM = Politico-Military)協議という、包括的な政策対話の枠組みも存在します。PM協議は2011年に開始され、私自身も2013年にジャカルタで開催された第2回協議に東京から出張して参加しましたが、広く外交や防衛上の課題について総攬して、将来の展望を率直に議論できる有益な機会でした。その後、2017年に第3回協議が開催されています。 「2+2」の方は、その名称の通り外務大臣と防衛大臣が揃い踏みで議論が出来る貴重な機会であり、日本は世界の限られた国との間でのみ、この枠組みを持っています。インドネシアとの間では2015年にASEAN諸国の中で初めて「2+2」が開始されました(その後、今年に入ってフィリピンとの間でも開始されています。)。2021年には第2回目が東京で開催され、その際には、両国間の防衛装備品・技術移転協定が署名されています。 このように、日本とインドネシアは民主主義国家として、また、同じ地域に属する海洋国家として、安全保障面でも多くの共通の課題を抱えており、インドネシアが標榜する「独立かつ能動的な」外交政策を十分に尊重しつつも、 協力できる余地は大きいと思います。ここで述べたような、今年の様々な動きは、今後に向けての大きな転機になるのではないかと期待しています。 3.対外発信 19日に、メディア・テンポの、また、28日にインドネシア国営テレビ(TVRI)のインタビューを受けて、G20に関連する日本とインドネシアとの協力や、二国間関係全般についてお話ししました。 また、17日の独立記念日の行事には参加出来なかった(注:大統領他の要人が出席する行事には、コロナの陰性証明が求められるのですが、その時点では、隔離期間を過ぎたにもかかわらず、残存ウィルスが体内に残っていたせいか、未だ陽性でした・・・。)のですが、折角の機会なので、独立宣言文起草博物館で行われた特別展示「赤道直下の桜」や、日系人団体である「福祉友の会」がソフトオープンした歴史ギャラリーを見学して、日本とインドネシアとの歴史的な関係に改めて思いを馳せました。 6日、JKT48の10周年コンサートを見に行ってきました。新曲が人気を博していて、インドネシアの若者が大勢いる現場の熱気に圧倒されるようでした。 4.その他の活動 今月は国会議員の方々と意見交換する機会がありました。1日にはデーブ・ラクソノ国会第一委員会委員(ゴルカル)、また、24日にはムハイミン・イスカンダル国会副議長(国民覚醒党党首、PKB)を国会に訪ねて、意見交換しました。また、スーパー・ガルーダ・シールドの現場には国会第一委員会の方々も視察に来られており、ヘルミ・ファイシャル・ザイニ議員(PKB)やジュニコ・シアハン議員(闘争民主党)とお話しする機会がありました。インドネシアが政治の季節に入っていく中で、こうした議員の方々との出会いを大切にしたいと思います。 24日、国際交流基金が実施する「日本語パートナーズ」事業に参加するインドネシア17期第1グループの皆さんが当館を訪問し、激励する機会がありました。皆さんには是非、双方向の交流を楽しんで欲しいです。 (了)
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