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在インドネシア日本国大使月間雑記(2021年7月)令和3年7月30日
![]() 1.緊急社会活動制限への対応 6月最後の週になって、インドネシア政府が大幅な活動制限を課する、そして、その中で、国内外の移動に際してワクチン接種証明書の提示が求められる方向であるとの情報が入ってきたことを受けて、大使館を挙げて、情報収集に当たり、また、それが在留邦人の方の不利益とならないよう、インドネシア政府に働きかけました。 具体的には、当地での影響力が強い米国や豪州、そして外交団長であるシンガポールの大使と緊密に情報交換し、閣僚レベルを含めて、政府の要路に早め早めに日本を含む外交団の懸念を伝えるように努めました。中でも、海外に出国する際にワクチン接種証明書を求めることは、日本でのワクチン接種のために一時帰国を計画している在留邦人の方が出国できなくなるだけでなく、そもそも大変不合理な話です。幸いにも、この点については早い段階でインドネシア側の理解が得られ、事実上撤回されるに至りました。その後、出国を目的とした国内移動に際してのワクチン接種証明書の提示の免除も確保することができ、ようやく出国を希望される在留邦人の方への障害は取り除くことができました。 この間、連日のように領事メールで情報を(一部の領事メールは真夜中に)発信しましたが、その中には、国内移動に関連して在留邦人の方からいただいた高速道路情報や、大使館員が実走して得た道路封鎖に関する情報なども入れて、出来るだけ在留邦人の方に最新の情報を提供するよう、努めました。 一方で、日本に一時帰国中の皆様の再入国に関する規制など、未解決の問題も残されていますので、これらの問題の解決に向けて引き続き取り組んでいきます。 2.特別便 8月1日から在外邦人向けのワクチン接種が東京で始まることから、一時帰国する邦人が増えることがそもそも予想されていたのですが、そこでネックとなったのが、日本国内で水際措置の観点から行われている我が国への入国者総数の制限でした。加えて、7月に入ってから当地の新規感染者が急拡大し、一時帰国を希望する邦人の数が大きく増加する中で、防疫措置の遵守を条件に、総入国者数の枠外で特別便の運航を始めることとなりました。即ち、日本国内の受入企業・団体が渡航者の本邦入国後14日間の防疫措置を自ら行うこと(入国後10日間の待機をする宿泊施設や、その間の検査などを自己負担とすることを含む)で、制限の枠外として扱ってもらうものです。 この特別便という考えは、一時帰国を希望する在留邦人の方に何とかその手段を提供すべく発案されたものですが、追加的な費用負担が高額であるとか、企業や団体に属する一部の人しか帰国出来ないのではないかとか、といった批判もありました。その後、自己負担が少ない形での個人向けの特別便の運航も開始されるに至り、状況は少し改善されたと思いますが、定期便の予約が非常に取りにくい状況で、日本との行き来が不便であることには変わりはありません。また、限られた時間や体制の中で、一時帰国の機会を何とか早期に提供することを目指して作業してきたため、早いタイミングで特別便を利用された方の中に不公平感を感じておられる向きもあると承知しますが、その点については何卒ご理解いただければと思います。 なお、特別便については、発表が唐突だったこともあって、インドネシアの一部の方に「日本人がインドネシアを見捨てようとしている」というイメージを与えてしまい、そうした声は大使館にも寄せられました。それを受けて「日本人は当地から引き上げるわけでは決してなく、多くの人は日本でワクチンを接種した後、インドネシアに戻ってくる」というメッセージを、私のインスタやメディアでのインタビューを通じて発信するように努めました。日本とインドネシアの双方において感染が拡大している中で、引き続き、非常に難しい状況にありますが、皆様が少しでも円滑に両国間を往来できるよう、今後とも大使館をあげて努力していきます。 3.新型コロナウイルス対策支援 インドネシアに対する新型コロナウイルス対策支援としては、7月1日と15日に合計約216万回分のアストラゼネカ社製ワクチンの供与を行いました。7月1日の供与に際しては、当初、空港での贈呈式が予定されていたのですが、新型コロナウイルス感染の急拡大を受けて、オンラインでの開催となり、ブディ保健大臣、マヘンドラ外務副大臣、ペニー医薬品・食品監督庁長官に参加いただきました。また、7月20日には、酸素濃縮器2,800台の供与も決定しました。 日本はこれまで、ワクチンが適切な管理下で保管・輸送されるようコールドチェーンを整備する「Last One Mile Support」、検査キットや人工呼吸器等の医療物資・器機の供与を行っています。7月6日には、国際労働機関(ILO)と協力して実施する職場におけるコロナ対策事業のローンチイベントを行いました。「コロナは国境を選ばない」という考え方の下、今後ともインドネシアと協力して、当地におけるコロナを乗り越えていきたいと思います。 在留邦人の方からはこれまで、日本政府が主導する形で当地でのワクチン接種を進めるべきであるという多くのご意見をいただいています。また、当地に限らず、ワクチン接種が進んでいないアジアの国々を中心に、そのような要望が寄せられていることを重く受け止めています。医療事情等の様々な制約がありますが、我々外交団からの働きかけを受けてインドネシア政府も在留外国人向けのワクチン接種を出来るだけ進めようとしている中で、大使館としても、在留邦人の方に何ができるのか、現在、真剣に検討しているところです。併せて、8月1日から予定されている在外邦人向けのワクチン接種を活用いただくことも重要であると思います。なお、私自身は、インドネシア外務省が行っている外交団向けのワクチン接種プログラムの下、7月19日にシノバックの第一回目の接種を受けたところです。 4.対外発信(東京オリンピック・パラリンピックを含む。) 日本としての発信強化という観点から、インスタ等を通じての発信は継続してきています。「このような非常事態に、何を吞気な。」とのご批判もあろうかと思いますが、このような時だからこそ、インスタ等での発信を通じて、日本に関する話題を提供するとともに、「日本はインドネシアと共にある。」という姿勢を示すことが重要であると考えています。 インドネシアへのアストラゼネカ社製ワクチンの供与を受けて、7月2日のコンパス紙に「通り過ぎない嵐はない」と題する寄稿が掲載されました。インドネシアへの連帯を呼びかける寄稿でしたが、大使館のインドネシア専門家と現地職員に手伝ってもらった結果、格調高いインドネシア語の寄稿であるとの評価をいただきました。大使館のインドネシア専門家と現地職員の底力を改めて実感した次第です。 少し明るいニュースとして、東京オリンピックの開幕があり、それに合わせて、7月23日のコラン・シンド紙(1面トップ)にスポーツをテーマにした投稿を行いました。また、インスタにオリンピック開催に向けたメッセージ動画も投稿しています。東京オリンピックは、日本とインドネシア両国のメダル獲得でスタートしており、バドミントンでは、日本とインドネシア両国の熱戦も楽しみです。これからも期待が募ります。 7月14日にはプリタ・ハラパン大学で両国の戦略的パートナーシップについてのオンライン講義を行いました。また、7月16日には日本の日本インドネシア協会の講演会で、着任6か月を経ての印象をお話しする機会を得ました。今後もこうした活動に継続的に取り組んでいきたいと思っています。 5.今月の一枚 日本の海上自衛隊の練習艦隊が、漂流したインドネシア人漁民を救助した際の様子です(写真:インドネシア海軍提供)。なお、この救助については、ヘリ・アフマディ在京インドネシア大使や、ゴーベル国会副議長他から、感謝のメッセージをいただきました。 ![]() (了)
駐インドネシア日本国大使
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