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日インドネシア防衛協力:地域の平和と安定の牽引力として、より強固な連携を(コンパス紙、10月20日)※コンパス紙の編集上、削除された部分を含む ![]() しかし、日インドネシア外交を支える協力のツールは経済分野だけにとどまらない。両国の間では、防衛分野における協力にも長い歴史があり、それは、近年着実に深化している。 経済分野でも日本とインドネシアは近年、ウィン・ウィンの協力関係を築いてきたが、それ以上に防衛協力の分野では、日本とインドネシアは、互いの知見と経験から学びあい、双方の能力を高め、地域の平和と安定のために共に手を携え協力する同志である。コロナ禍においても活発に行われた今年の両国の防衛協力について御紹介したい。 これまで、軍種間の協力は、同じ海洋国家ということもあり、艦艇の相互訪問や共同訓練等を通じた海軍種間の交流が中心であったが、今年は、陸軍種間の協力に大きな深化がみられた。 その象徴が、スーパー・ガルーダ・シールドへの陸上自衛隊の初参加である。これまで米インドネシアの陸軍種間で実施されてきたガルーダ・シールドが、今年は海・空軍も含めた全軍種による多国間演習スーパー・ガルーダ・シールドへと拡大され、インド太平洋地域最大規模の共同訓練となった。 8月3日には訓練開会式に併せて日米インドネシアによる空挺降下訓練が実施され、私も視察した。この空挺降下訓練は、陸上自衛隊がインドネシア陸軍との間で行った初の実動訓練だが、米陸軍も交えて、戦術技量の向上や信頼醸成を図るとともに、3カ国の強固な連携とプレゼンスを示せたことは自由で開かれたインド太平洋の維持・強化に資するものでもあり、大きな成果であった。 このように、相互理解を図りながら互いの能力を高め合う協力は、共同訓練だけではない。自然災害対応という共通の課題を有する両国の間では、人道支援・災害救援分野の協力も進んでいる。防衛省は、これまでに約100名のインドネシア国軍関係者等を対象にセミナーや研修を実施している。また、今年7月には、航空自衛隊からジャカルタに派遣された専門家との間で、この分野におけるインドネシアの専門家との交流が初めて対面で実施された。双方の知見や教訓の共有を通じて、信頼関係や連携をより一層深め、両国の災害対処能力の向上につながっていくことを期待する。 更に、両国の間では、PKO協力を始めとする国際社会の平和と安定に貢献する為の協力も行われている。8月、インドネシア初開催となる国連三角パートナーシップ・プログラムが始まり、陸上自衛隊の教官団がインドネシア国軍の工兵隊員を対象に重機操作訓練を実施した。訓練に参加した隊員全員が、終了後に国連PKOミッションに派遣される予定であり、両国のこうした効果的な協力が国際社会の平和と安定につながっていくことは誠に喜ばしい。また、インドネシアは、世界第8位、ASEANでは第1位のPKO要員派遣国であり、彼らが積み重ねた経験や知見から自衛隊が学べることも多くあるので、この分野での協力が更に発展していくことも期待される。 このように、日インドネシア防衛協力は、両国の関係深化にとどまらず、自由で開かれたインド太平洋の実現や国際社会の平和と安定に貢献する形で進歩し続けているが、それを支える「ひと」という大切なアセットの存在も強調したい。日本の防衛大学校では、インドネシア国軍士官を留学生として受け入れており、これまで約50名の卒業生が輩出されている。彼らは国軍内の様々なポストで活躍しており、今回のスーパー・ガルーダ・シールドを始めとする数々の防衛交流事業において、両国の架け橋として、存在感を発揮している。私もスーパー・ガルーダ・シールドを視察した際、何人かと懇談する機会を得たが、彼らが帰国後も日本に親しみを感じ、日インドネシア防衛協力の縁の下の力持ちとなってくれていることを大変心強く思った。 このように現場レベルでは多面的な防衛協力が行われており、これを一層推進していくためには、ハイレベルでの緊密な意思疎通と認識の共有も不可欠である。コロナ禍でも継続してきたが、今後も、外務・防衛閣僚会合「2+2」やADMMプラスを始めとする大臣級の協議、幕僚長クラスの交流や政策協議等の機会を通じ、あらゆるレベルで両国の防衛協力について議論を重ね、一層強固な連携を図っていく必要がある。 国際情勢がめまぐるしく変化する中、民主主義国家として価値観を共有し、同じ地域に属する海洋国家として安全保障面でも多くの共通課題を抱える両国の防衛協力が果たす役割は、国際的に見ても今後より一層重要性を増してくるだろう。ここで述べた今年の様々な動きが、地域の平和と安定の牽引力として、両国の連携をより強固にしていくための大きな転機になることを期待している。 金杉憲治 駐インドネシア大使 >>>その他の寄稿文・挨拶 |