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朝令暮改のインドネシアと共に日本経済新聞(2023年1月30日付け)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD10BMQ0Q3A110C2000000/ インドネシアは英フィナンシャル・タイムズが評したように「overlooked giant」(見過ごされてきた巨人)だ。民主主義国として世界3位となる約2億7千万人の人口を超え、毎年3百万人以上増加。平均年齢29歳の国民の約9割はイスラム教徒だが、他に5つの宗教を認める。700近い民族を公用語のインドネシア語と「多様性の中の統一」をスローガンに掲げ、まとめ上げている。領海・排他的経済水域面積も世界3位で、ニッケルなどの天然資源にも恵まれている。
民主主義国家で海洋・群島国家という共通基盤をもつインドネシアと日本。両国は国内外で共通の課題を抱えるが、協力の素地は十分にある。高齢化で人口減少に悩む日本と、若くてエネルギーあふれる国民が増えているインドネシアは相互補完的でもあるからだ。 実際に「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想に基づき、地域の円滑なエネルギー移行に取り組むことで両国は合意している。経済分野でも自動車産業を中心として、インドネシアを製造・輸出の拠点に日本は投資を重ねている。約4万人のインドネシア人技能実習生が日本で学ぶことも、両国の経済相互関係を深化させている。 しかし、インドネシアはかつての姿とは異なる。近年は中国や韓国の企業が競争力を増し、製品市場の確保やインフラ投資などで日本企業が苦戦するケースも多い。また「政府の取り組みを含め、日本は意思決定に時間がかかり過ぎる。リスクを過大評価し過ぎる」といった不満がインドネシア側から聞かれる。逆に日本側からすれば、突然の輸出入規制の導入、不透明な課税慣行、頻繁なルール変更など、インドネシアに注文を付ける必要があるのも事実だ。 インドネシアが安定した民主主義国家として持続可能な成長を続け、双方が裨益(ひえき)する関係を強化していくことが重要である。インドネシアは遅くとも独立100年を迎える2045年までに先進国入りを目指し「朝令暮改」すら肯定的に捉えて、変化に機敏に対応していこうとしている。日本もオールジャパンでそれに歩調を合わせて共に成長していくことを追求していきたい。 金杉憲治 駐インドネシア大使 >>>その他の寄稿文・挨拶 |