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EKB62(その4);ラマダンを知っていますか?2017年7月1日 ラマダンとはこのコーナーの読者の方々には、当たり前のことかもしれませんが、今回は、ラマダンについて書きたいと思います。 ラマダンそのものは、イスラム歴であるヒジュラ暦の9月を意味する言葉です。この月にコーランが預言者ムハンマドに啓示されたことから、イスラム教徒にとってラマダンは聖なる月となっています。 ラマダン月には、イスラム教徒は日の出前から日没にかけて一切の飲食を断つことになっています。この「断食」(サウム。インドネシアではプアサ。)は、「巡礼」(ハッジ)や「礼拝」(サラー)と並ぶイスラム教の五行(5つの義務)の一つです。 断食は、本来的には、ムハンマドとその信者がムハンマドの生まれたメッカでの布教を諦めヤスリブ(メディナ)へ移住した「聖遷」(ヒジュラ)の道中の苦しみを追体験することが目的ですが、一般的には、空腹・自己犠牲を経験し、飢えた人への共感や食べ物に対する有難みの念を育むことを重視したものと言われます。また、何といってもラマダン月には、全世界のイスラム教徒が断食を行うのですから、共に苦しい体験を分かち合うことでイスラム教徒同士の連帯感は強まりますし、五行の一つである「喜捨」(ザカート。施し。)も、いつにも増して活発に行われます。 ラマダンはいつ?今年のラマダン月は、5月27日〜6月24日でした。ヒジュラ暦では、毎月の始まりと終わりは月の満ち欠けによるので、正式には、宗教機関による新月の確認により確定します。今回のラマダン月の終わりも、前日まで確定しませんでした。 ヒジュラ暦は純粋な太陰暦(閏月による調整をしない。)なので、太陽暦と比べ1年で約11日早まります。ということは、同じ季節にラマダン月を迎えるには、約33年かかります。ヒジュラ暦元年は、「聖遷」(ヒジュラ)が行われたとされる太陽暦622年7月16日となっており、今年は、1438年です。 実は、この結果、スポーツの世界では、時に、アスリートが困難に直面しています。例えば、2012年のロンドン・オリンピックでは、オリンピック開催時期とラマダン月が重なってしまいました。日本の大相撲でも、初めてのイスラム教徒の力士であるエジプト出身の大砂嵐関が、場所とラマダン月が重なる時にも、苦しくてもしっかりと断食をしていることが話題になりました。強い信仰心に支えられたことですが、驚くべき精神力だと思います。 ちなみに、2020年の東京オリンピックは7月24日〜8月9日、パラリンピックは8月25日〜9月6日開催の予定ですが、この年のラマダン月は、今のところ、4月24日〜5月23日の予定で、重なりません。アスリートの方々の健闘を祈ります。 ラマダン月の行事世界最大の数のイスラム教徒がいるインドネシアでは、断食が日々の生活に色々関係してきます。例えば、大使館の足回りを支えるドライバーの中にも、イスラム教徒の人が沢山いますが、彼らは、断食の中、日中の仕事をしっかりとこなしており、頭が下がります。たまに、断食明けの日没の時点で運転をしていることも有りますが、その際にも、「水を飲んで良いですか?」と断った上で、初めて水を口にします。その一方で、イスラム教徒でない大使館員は、日中は、イスラム教徒の面前では出来るだけ飲食をしないように心がけています。これは、最低限の礼儀、相互尊重だと思います。 ![]() 私も、今回、初めて公邸でブカ・プアサを主催しました。日本は、インドネシア全土に広がるイスラム寄宿塾(プサントレン)の先生方を毎年日本に招待し、異なる文化の間の対話や理解を高めるための試みを行っています。このプログラムは開始から既に13年経ち、訪日した先生方は、延べ148人に及びます。このプログラムの経験者や支援者の方をお呼びして公邸でブカ・プアサをやるのはここ数年、恒例になっており、今年も、地方からわざわざおいで頂いた方を含めて、約70人をお迎えできました。 ![]() ![]() そして、ラマダンが明けたら、イドゥル・フィトリ(ラマダン月明け2日間の祭日。レバランとも言う。)、そして、オープン・ハウスです。今年は、初日である6月25日には、朝9:00からの大統領主催に始まり、主要な閣僚や有力者が夕刻まで次々と自宅を開放し、楽団を入れて、招待客のみならず、一般客に食事を振舞うのです。ジョコウィ大統領夫妻は、就任一年目の2015年のこの時期は生まれ故郷のソロに帰郷し、昨年はアチェとパダンで過ごしており、オープン・ハウスをジャカルタで行ったのは今年が就任以来初めてで、カッラ副大統領夫妻も参加しておられました。オープン・ハウスは初日がピークですが、2日目もいくつか開催されます。ちなみに、私と家内は、初めての経験でもあり、初日に18か所、最終的には、2日間で21か所のオープン・ハウスに伺いました。それぞれ出身地方やお人柄が出た、バラエティに富んだ経験でした。 そして、インドネシアでは、ラマダン月明けには、約1週間の休暇です(大使館は3日間閉館)。多くの人が地元に帰って、渋滞と無縁となったジャカルタで休暇を過ごすのは、格別でした。 |