(1) | 日本国内における新型インフルエンザ対策の検討状況
    国内での検討状況については、4月に政府内で検討中の「新型インフルエンザ発生初期の対策(案)」が発表されたが、これは内閣官房で特に水際対策と国内封じ込め対策について取りまとめているもので、最終的に7月末を目処にひとつの対策として収斂される段取りになっている。一方で、与党プロジェクトチーム(PT)が検討を重ねてきた提言が本日発表される予定で、これを受けて水際対策を含む政府の対策に更に追加すべき点、修正すべき点を議論していく予定であり、勿論、これまでにも既にご意見を伺ってきているが、今日の会議でのご意見も持ち帰り、政府内での検討に反映させていきたい。   |
(2)   | タミフル等大使館支援について
    タミフルの備蓄量は、平成17年の補正予算において、予算要求の積算根拠として、当時の専門家の議論を踏まえ、推定罹患率25%を用い、途上国の在留邦人の25%の備蓄を確保した。当時の海外在留邦人100万人の内、途上国在住者は約40万人、そのうち25%が発症するとして10万人分という計算である。一方、平成17年以降、備蓄量に関してはいろいろな議論がなされてきている。当時は1人分1日2錠5日分と計算したが、それで十分なのか、専門家の間では、特に重症例については倍量投与が必要なケースもあるとの議論もある。また、在留邦人の25%分で十分か、途上国の特殊な厳しい環境を念頭に置けば、もっと必要だとの議論もある。これらを踏まえ、外務省としては、できるだけ早く、追加備蓄のための措置をとりたいと考えている。与党PTの提言の中にも、国内備蓄量の増量に止まらず、在外備蓄分の増量についても触れられている。PTの提言に盛り込まれたからといって必ず政府の施策として実現されるわけではないが、増量の方向で具体化していきたい。
    次に、備蓄したタミフルをどのように配布するかが難しい課題である。国内法上の整理はついているが、特例的なケースでどのように配布するか、国によっては医療機関が破綻することもあるだろうし、そもそもタミフルを十分備蓄していない場合もある。状況により、現地医療機関の協力を得ながら配布することが可能な場合、不可能な場合がある。現地法令を尊重しなければならないが、一方で、在留邦人保護のため配布はしなければならず、工夫が必要であり、それぞれの国の状況に応じて検討しているところである。この点については、各在外公館ごとに公館と在留邦人の皆様との間で具体的方法について相談を進めていただきたい。
    食料品等の備蓄については、国内においても最低2週間分の備蓄を呼びかけているところであるが、なかなか周知が行き渡っていないのが現状である。インドネシアにおいても、これまでにも呼びかけを行ってきていると承知しているが、本日改めて席上配布させていただいた。資料は国内での呼びかけを前提としているものであるため、当地では手に入りにくいものもあるかもしれないが、代替物等を上手く利用して準備頂きたい。   |
(3) | 危険情報の発出について
    フェーズが上がった場合にどのような危険情報を発出するかについては、大使館のHPにも掲載しているが、発出される情報の文言だけを見ると、何を期待されているのか、よく分からない部分があると思う。具体的には、フェーズ4宣言前の段階で「予め今後の退避の可能性も含め検討してください。」という情報を出すことになっているが、これは、退避の準備をしつつ次の情報が発出されるのを待てばよいのか、本当にすぐに退避しろと言う意味なのかわかりにくいかもしれない。ここで、我々として意識しているのは、これに続く次のオペレーションとして、空港検疫の強化、定期航空便の運航自粛、自粛後の自衛隊輸送機の運行には輸送力の限界があり効率的・迅速な退避は期待できないこと等の制約があることを考えると、リスクを限りなく小さくしたい人、家族や職員のうち退避が可能な人については、この最初のタイミングで退避して頂く必要があるということである。このタイミングを逃すと、帰る手段が無くなるかもしれないとの前提に立って頂き、より客観的な誰に対しても説明できる根拠が必要だから2番目の情報が出るまでじっと待っていようとは考えないで頂きたい。
    加えて、感染症危険情報は、日本の対策本部において様々な要素を判断して発出することになるため、迅速に発出されるのか不安に思っている方もおられるかもしれないが、我々としても、これを補うため、「総領事館のお知らせ」という形で、併せてあるいは先んじて、客観的情報を提供することを考えているので、これらを元に早めの行動をとって頂きたい。
    理想的には、各社が事前に業務継続計画を立て、退避する人、残る人の規模を決定し、全体としてその規模を共有できれば、事前準備計画を立てることが可能になる。正確でなくてもよいので、およそこんな感じという計画を早めに策定され、大使館に情報提供頂けると有り難い。   |
(4) | 緊急退避について
    民間航空機の定期便・臨時便が運行されている間に出国することが基本となる。その後は、チャーター機や政府専用機・自衛隊機による退避が検討されているが、派遣に係る準備期間、キャパシティを考えると、迅速な輸送は難しい。是非、早めの退避をお願いしたい。
    4月に発表された水際対策案の中に、「発症者は乗せられない」との記述があり、「発症者を見捨てるのか」という受け取り方をされた方もいたようだが、これは一緒に帰国する方の安全確保を考えての措置であり、御理解願いたい。一方で、では、乗れなかった人はどうなるのかという点に関しては、医療事情の悪い国においては、別途の手段が可能かどうか、現地で治療薬を使いながらの対応になるのか等につき検討していく。また、大使館としては医療機関等の情報提供等という形で相談にのっていきたい。   |
(5) | レパンデミック・ワクチン
    プレパンデミック・ワクチンについては、現在、日本で安全性の確認が行われており、同確認は平成21年3月に終了する。現在の備蓄分3000万人分については、医療従事者や社会機能維持者に対して優先的に接種される方針とされているが、その範囲ははっきり固まっていない。当地在留邦人の間からプレパンデミック・ワクチンの接種希望があることについては、日本国内でも関係者と情報共有しており、在留邦人の希望者に優先接種を行うことが可能か否か議論していきたい。
    但し、プレパンデミック・ワクチンの位置づけは、今持てる代替手段としてのワクチンにすぎず、確実に有効かどうかは実際に新型インフルエンザが起こってみないと判らない、半分は安心材料みたいなものである。むしろ、それならば、プレパンデミック・ワクチンではなく、パンデミック・ワクチンを新型インフルエンザ発生後できるだけ早期に全員分用意することがより重要な課題として位置づけられている。   |
(6) | 帰国した子女についての受け入れ体制
    本件については、平成18年9月の段階で発表された行動計画の中で既に言及されており、帰国した子女が風評による不当な扱いを受けることがないよう、文部科学省から教育委員会に対し通達が発出されている。もちろん、このような問題は、生徒が実際に帰国する際にきちんとフォローしていくことが重要であり、外務省としてもリマインドしていきたい。 |