インドネシアで安全に暮らすために
はじめに
  インドネシアでは、1997年7月に発生したアジアの通貨危機の影響を受けた未曾有の経済混乱に端を発し、翌98年には複数の都市で生活必需品の値上がりに不満を持った群衆による暴動が発生、5月14日にはジャカルタで大規模な暴動が発生し、同21日スハルト政権が崩壊するに至りました。この混乱の中、日本国外務省は、同17日に「家族等退避勧告」を発出しました。これに伴い、5月上旬からの短期日の間に、日本航空及び全日空の臨時便並びに政府チャーター便等で約9000人の在留邦人が帰国乃至近隣諸国に出国しました。
  このような事態はかつてない体験であり、多くの在留邦人が、不安、恐怖、苛立ちの中で何日間かを過ごしたこの5月暴動は、私達に緊急事態への備えについて多くの教訓を残したのではないかと思います。
  インドネシアでは、その後も依然として低迷する経済情勢の中、一般犯罪が増加・凶悪化していることに加え、政権交替に伴う混乱、民族や宗教間の対立等に端を発する社会騒乱並びに爆弾事件が各地で発生し、また、02年10月にはバリ島で大規模な爆弾テロ事件が発生しました。更には、今後04年に総選挙が予定されており、国内の政治状況が過熱すれば、治安状況も流動化することが懸念されるところです。
  このような政治・社会情勢の中で安全に生活するためには、日々刻々と変わる国際情勢や政治・経済・治安情勢、更に対日感情の変化等を的確に把握し、各人が「自分の身は自分で守る」との心構えで、常に警戒心を持ち、行動することが大切です。この小冊子には、インドネシアで生活する上で、家族全員が念頭に置くべき防犯上の一般的な心得や、緊急時への心得と対処要領を記しておりますので、御参考にしていただきたいと思います。
  なお、不幸にして何らかの犯罪・事件に巻き込まれた場合には、日本国大使館またはジャカルタ日本国総領事館の他、最寄りの各総領事館に御相談下さい(大使館は24時間電話受理可能です)。