「日本とインドネシアの観光関係
〜インドネシアを訪問する日本人観光客を増加させるには」
インドネシア語
皆様、こんにちは。
私がジャカルタに赴任してからすでに2年が経ちました。2年の間に私は、西はナングロ・アチェ・ダルサラーム州のサバンから東はパプア州のジャヤプラに至るまで(残念ながら、ムラウケにはまだ行っておりませんが)、インドネシアの様々な場所を訪問する機会に恵まれました。私がインドネシアの様々な場所を訪問して感じたのは、インドネシアは、多様な文化からなり、豊かな自然に恵まれた本当に魅力的な国だということです。私は、是非、このインドネシアの魅力を特に私の祖国である日本の方々に知っていただき、直接インドネシアを見ていただきたいと思っています。
本日は、まず、インドネシアを訪れる日本人観光客の現状についてお話をした後、インドネシアを訪問する日本人観光客をいかに増加させるか、という観点からお話をしたいと思います。
観光客数にはいる前に、両国をつなぐ航空便について申し上げます。現状は次の通りです。
(1) ジャカルター成田
ガルーダ・インドネシア航空、日本航空、全日空が毎日1便
(2) デンパサールー成田
ガルーダ・インドネシア航空が毎日1便
(3) デンパサールー関西国際空港(大阪)
ガルーダ・インドネシア航空が毎日1便
(4) デンパサールー羽田
ガルーダ・インドネシア航空が毎日1便
最近の日インドネシア間の経済関係のダイナミズムを反映し、成田-ジャカルタ間の便は常に満席の状況となっています。また、デンパサール-羽田便は昨年4月に就航したばかりですが、バリと日本の間の人の交流に新たな刺激を与えています。また、本年10月にはガルーダ・インドネシア航空によるジャカルタ関西国際空港便が週4便就航しますが、これによりインドネシアと日本の関西経済圏が直接結ばれることとなります。
このように、航空便に関してはこの1、2年、新たな好ましい展開がみられます。
次に、インドネシアを訪問する日本人の数を見たいと思います。
2012年は445,066人となっており、2011年より32,443人増加しています。これは、主に順調な経済発展を続けているインドネシアに商用で訪れる日本人ビジネスマンが増加しているからではないかと思います。しかし、インドネシアは日本人海外訪問客にとってまだ10番目の訪問先であり、近隣諸国を訪問する日本人数と比較しても、まだまだ拡大させる余地があります。すなわち、2012年には、タイを訪れている日本人は1,371,253人に達しています。マレーシアは2008年〜2011年はインドネシアより訪問者数が少なかったのですが、2012年はインドネシアを抜き、訪問者数は470,008人となりました。フィリピンは2009年に落ち込んだ後増加傾向に転じ、2012年には412,474人とインドネシアとの差が縮小傾向にあります。
インドネシアの有している観光的魅力を考えますと、観光客を増加させる余地は極めて大きいと思います。
次に、インドネシアを訪問する日本人はどのような場所を訪問しているかを述べたいと思います。次の表はインドネシアを訪問する日本人がどの空港・港からインドネシアへ入国しているかを示した表ですが、これを見ると日本人の大部分がジャカルタかバリからインドネシアへ入国していることが分かります。実際、インドネシアを訪問する日本人の殆どが商用のためにジャカルタ、そして観光目的でバリ及びジョグジャカルタを訪問しています。
しかしながら、インドネシアには、その他にもすばらしい場所がたくさんあります。私はこの2年の間にサバン、アチェ、メダン、トバ湖、ニアス島、パダン、パレンバン、スマラン、ジョグジャカルタ、ソロ、スラバヤ、東カリマンタンのバリックパパン及びブラウ、バリ島、マカッサル、モロタイ、アンボン、ビアク、ジャヤプラなど様々な地域を訪れました。もちろんバリ島は何回も訪問しましたし、ロンボック島やモヨ島も訪れました。いずれの場所もその独自の文化と美しい自然を有したすばらしい場所でした。
私は、是非、日本人にジャカルタ、バリ、ジョグジャカルタだけではないインドネシアの多様性を知ってもらい、インドネシアの様々な場所を訪問してもらいたいと希望しています。
それでは、このようなインドネシアの大きな観光的魅力を活かしていくにはどうすれば良いでしょうか。
(1) | 第一に、すでに多くの努力が払われていますが、観光客の好みにあったアクティビティ・施設・サービスを充実させていくことが、外国人観光客誘致には欠かせません。特に、日本人の観光客について申し上げますと、次のようなアクティビティが信頼できるオペレーターにより安全に実施できるのであれば、多くの日本人の関心を惹くことになるでしょう。
?@ | やはり、白い砂浜での海水浴、透き通ったサンゴ礁でのスノークリングやダイビングは多くの観光客にとっての憧れです。既にインドネシアの海の美しさについては多くの情報がありますが、まだあまり知られていないところも多々あると思います。 |
?A | サイクリングやトレッキングは常に人気があります。私もジョグジャカルタやバリでサイクリングやトレッキングに参加をしたことがありますが、村を見学し、村の住民と交流することができ、大変魅力的な体験でした。風光明媚な場所で安全にサイクリング・トレッキングができ、また、住民との交流もできるようなイベントを企画することは観光促進につながると思います。 |
?B | ジャングル・ツアー
日本人にとっては、インドネシアのジャングルの風景は大変エキゾティックです。エコトレッキングは多くの人の関心を呼ぶと思います。私自身は参加していませんが、私の友人たちは、カリマンタンのマハカム川の船の旅に感激していました。また、私は、バリクパパン近郊のサムボジャのオランウータンのリハビリテーション・センターを訪問しました。オランウータンとの出会い、インドネシアが森林や環境の保護にいかに努力されているかを知ることは大変有意義でした。このような体験は多くの日本人にとって大変魅力的であると思います。 |
?C | バードウオッチング
日本にはたくさんのバードウオッチング愛好家がいます。インドネシアには数多くのエキゾティックな鳥がいますので、手軽にバードウオッチングができれば、多くの観光客に喜ばれることになると思います。 |
?D | 文化、伝統、歴史
各地の文化や伝統に触れることは、大変な貴重な体験になります。
また日本人にとっては、インドネシアは歴史の教訓、平和の大切さを学ぶ貴重な場所となっています。 |
?E | 温泉
日本人は、温泉が大好きです。西バリでは、ホテルのバンガローにプライベートで24時間入れる清潔な温泉があり、大変エンジョイしました。インドネシアには温泉が数多くあるので、それぞれの温泉についてその効用の情報を整備したり、施設を充実させれば大きな観光資源になるとおもいます。 |
?F | ゴルフ
ゴルフも重要です。日本人はゴルフ好きな人が多く、バリのヌサデゥアやニルワナなどは日本人の人気のゴルフコースの一つです。
なお、ジャカルタを訪問する日本人は殆どが商用目的の出張ですが、ジャカルタ周辺には、多くの良いゴルフ場があります。一流ホテルとゴルフ場が提携し、訪問者が気軽にゴルフを楽しむことができれば、ジャカルタは、ビジネスで訪問する人にとってより魅力的になるとともに、ゴルフ観光地としても魅力的な街になると思います。 |
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(2) | 以上、観光促進のためのアクティビティやサービスの面について述べましたが、インドネシアに観光客を呼び込む上で何より重要なのは、情報発信ではないかと思います。観光客を増やすには、観光地の魅力、観光地へのアクセス方法(交通手段)、ホテル・レストラン・ショッピング、(1)で述べたような体験できるアクティビティの情報を分かりやすく発信していく必要があります。
インドネシアの魅力を日本人に広報していく方法としては通常の広告の他に次のような方法が考えられると思います。
?@ | 第一に、インドネシアの地方自治体が日本のテレビ局や旅行業者を招待し、テレビ番組で取り上げたり、ツアーに組み込んでもらったりすることです。特にインドネシアを訪問する日本人の多くはツアー旅行を利用するため、ツアーに組み込んでもらうことにより、訪問客が増えることが期待されます。 |
?A | 第二に、インドネシアの地方自治体が航空会社や旅行業者等と一緒に観光プロモーションイベントを実施することです。これは、日本の地方自治体(山梨県)の例ですが、山梨県はガルーダ・インドネシア航空と共催で、富士山麓や山梨県でサイクリングイベントを実施しました。約50人のインドネシア人観光客が日本を訪問した他、報道でも大きく取り上げられ、山梨県の魅力を多くのガルーダ・インドネシア航空利用者に宣伝できたのではないかと思います。
毎年、西スマトラではブキットティンギ・サイクリング・ツアーが開催されていますが、本ツアーの日本における知名度は高まっています。また私は昨年、インドネシア政府が実施されたセイル・モロタイに参加しましたが、このようなイベントはインドネシア各地の魅力を発信する上で大変効果的です。本年のセイル・コモドを楽しみにしているところです。 |
?B | 日本人に対する広報を考えた場合、特にバンコク、シンガポール、クアラ・ルンプールなど周辺諸国に在住する日本人へのアプローチも重要であると思います。バンコクには46,410人の、シンガポールには26,032人の、クアラ・ルンプールには6,257人の在留邦人がおり、彼らは日本にいる人たちよりもより簡単にインドネシアを訪問できます。彼らはインドネシアの魅力を広報する上での重要なマルティプライヤーですので、これら地域の日本人向け旅行業者との接触も有意義と思います。 |
?C | 観光交流を含め日本とインドネシアの間の交流を深めることは大使館の重要任務です。日本大使館もホームページやフェースブックがありますので、インドネシアの魅力についてはこれからも積極的に発信して行きたいと思います。皆様もインドネシアの様々な観光資源、自慢な場所等があったら、是非大使館にもお知らせください。 |
本日は、特に、インドネシアの魅力をどのように日本人に発信していくか、という点からお話をさせていただきました。しかしながら、私は同時に、インドネシアの方々に日本の魅力を伝え、多くのインドネシア人に日本に行っていただきたいと考えています。両国民同士の理解を深め、両国の関係を草の根レベルから強化するためには、このような観光を通じた人的交流は非常に重要であるからです。
一緒に観光分野における相互交流を強化するべく、知恵を出していきたいと思います。ご意見やアドバイスがあれば、日本国大使館にご連絡いただければ幸いです。
ご静聴、ありがとうございました。
パワポ資料(インドネシア語・PDF)
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